銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 …………。

 …………。


 それは、闇、だった。


 なにも無い。『存在』すらも無い、ただの『無』。

 漆黒の空間だけがあった。

 この闇は、どこまでも果てなく続くのか。

 それとも、ほんの僅かばかりのものなのか。

 それすら知りえない、ただの『無』の中に、あたしはポツンと取り残されていた。


『存在よ』


 ひとりぼっちの空間に、唐突に意識が響いた。

 声では無かった。声なんてここには存在しないから。

 そもそも音すら存在していない、何も存在しない場所で、何かの意識があたしの中に直接入り込んでいる。

 その無遠慮さが、少し不快だった。

 ……だれよ?

『わたしは破壊と創造』

 破壊と、創造? じゃあ、あなたが始祖の神なの?

『それは、わたしにはあずかり知らぬこと。わたしは破壊し、創造するだけ』

 ……そう。

 あなたには、自分が始祖の神だという認識なんて無いのね。

 別にもう、それもどうでもいい。だって世界は無くなってしまったのだから。

 何ひとつ無くなってしまった。感慨もなにも無い。

 ただその事実だけを、淡々とあたしは納得していた。
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