銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 だからこそよ。
 神様に会いさえすれば、事情は好転するかもって思ってたけど、その神様本人がこの様子なんだもの。

「ねぇモネグロス。力を取り戻せたら、あたしを元の世界へ戻せる?」

「私だけの力では無理かもしれませんが、他の神も協力してくれるなら」

「よし! 決まった!」

 やっぱり一番の近道は、神に力を取り戻させる事だわ。

 その為には森の国へ行って、狂王のネジ曲がった頭を何とかしないと。

「……何とかって、どうするんだよ?」

「あんた言ったじゃないの。火種が必要だって。あたし達が、その火種になればいいのよ」

 精霊たちは、みんな不満を持ってるんでしょう?

 人間達だってそうよ。圧政の下で満足してる国民なんていないわ。マゾじゃあるまいし。

 今にも不平不満が爆発寸前なはず。

 あたし達がアグアさんを奪還すれば、精霊達も奮起するし、人間達もきっと立ち上がる。

 そうすれば、この世界の神や精霊の力が取り戻せる。

 そうなったらこっちのもんよ。国王ったって、しょせんただの人間だもの。

 神様の指シッペひとつで、コロンと引っくり返るわ。

 指シッペくらい自衛権として認められるでしょ?

「そう、うまく事が運ぶか?」

「運ぶわよ。あんた大塩平八郎の乱を知らないの?」

「知らねえよ」

「大塩平八郎はね、火種になったのよ。彼の死後、火種は大きく燃え上がったのよ」

 あたしは死ぬつもりは無いけど、きっかけは必要だわ。どうしても。
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