蒼い時
「部長、社長がお呼びです」


ミーティング中でも、社長呼び出しは最優先。大きくなっても、それは変わっていない。


「後は、お願いね」


「部長も大変ですよね」


直属の部下である、田中が苦笑しながらそう話す。いつもの事だ、こちらの予定などお構いなしなのだ。


自社ビルと言っても、それ程大きくもない。十二階、最上階のボタンを押した。


社長室前にカウンター、秘書は気の毒そうに笑いかけてドアを開けた。


「悪いな、佐野。座ってくれよ。何か飲むか?」


「いえ、結構です。それで、ご用件は何でしょうか?」


「何だよ、ご機嫌斜めだな。お前まで邪険にするなよ」


どうやら、少し凹んでいる様子だった。決して泣き言は言わない、それでも口調や態度から感じる。


「社長…又、役員とやり合いました?」


以前と違うのは、会社が思い通りにならない事だ。コンプライアンスやら、うるさ方のファンド絡みの役員は、社長の思い付きを許さない。
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