蒼い時
「その案件さ、佐野さん頭で進めてみてよ」


「はい?私がって…どういう事でしょうか」


「だからね、提携なのか買収なのかも含めて、事業として進めてって事だよ」


「ちょ、ちょっと待って下さいよ社長!無茶ですよ」


「大丈夫だって、先方には連絡しておくから。まあ、一応加藤を責任者にするけど、全権は佐野さんね」


「困ります!社長」


「ダメだよ、決定だからね。それで、新しい部署作るから今日中に仕事引き継いでおいて」


無茶振りにも程がある。組まされる加藤は、取締役で社長と一緒に会社を立ち上げた男だった。


会社自体が若いとはいうものの、二十六の小娘が三十半ばの上司を差し置いて、全権を任される。


一般の会社であれば、形ばかりの話なのだろうが、この会社では社長の決定は絶対であった。
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