【神様の悪戯】
「平凡OL、って企画なんだろ。それにお前がでる理由ないだろ」
「だって、同期の子困っていたんだもの。読者モデルじゃ可愛すぎる、かといって一般人じゃそのアイドル様前だと普通に話せないんだって」
無難なベージュのルージュを塗るために鏡を覗きながら言うと、彼が黙った。
いつも、不機嫌になったときはこうして黙ってしまうことがある。
そういう瞬間、いつも幸せを感じる。
「…貴方でしょ、OKだしたの」
「…」
彼は、私の部署の編集長。
もちろん、この仕事にOKを出したのは彼。
付き合いだしたのは、二年前。私が26歳の誕生日の日。
職場じゃ冷徹人間・緑の血液と言われている締切の鬼の彼は、意外にロマンチストだったらしく、私にガーベラを一輪くれて、「付き合いか」そう言った。
私はまだ、その愛しい思い出を昨日のことのように覚えている。
「アホ面晒さないようにするって。まあ、全国区の雑誌の特集で晒されるんだから既に羞恥プレイよね」
「OKするんじゃなかった」
「馬鹿」
顔だけで振り返ると、ベットにうつぶせになっている彼。
この人は、どうしてこんなに可愛いの。私の気持ちを離さない。