俺様ホストに愛されて
「じゃあな」
そう言って伝票を持って立ち上がった太一は、眉を下げながら無理に笑ってみせた。
「…………」
あたしは目を伏せたまま返事をしなかった。
「あ、ストーカーまがいなことして悪かったよ。けど、俺は写メなんて知らねぇから。じゃあな」
穏やかな太一の声の後に、遠ざかっていく足音。
しばらくあたしは、呆然としたまま動けなかった。
別に未練があるとかそういうんじゃないけど、長年一緒にいたわけだから多少の寂しさはある。
でもそれは、もの悲しいものなんかじゃなくて
なにか一つのことをやり遂げた後みたいな、すっきりしたもの悲しさだった。
この時のあたしは、最後に言った太一の言葉を聞き逃していた。