世界を濡らす、やまない雨


「ごめん、俺余計なことしたかな。本当にあの人と仕事の話する予定だったの?」

課長の乗ったタクシーが去ったあと、私を呼び止めた若い男は唇を歪めながら困ったように笑った。


「いえ……」

彼が誰なのかはわからないが、例え人違いであったとしても私に声を掛けてくれてよかった。

課長は去り際に仕事の話だと言ったけれど、多分それは突如現れたこの若い男の前で上司としての体裁を保つためだ。


「ありがとうございます」

結果的に助けられた私は、彼に礼を言った。

あまり感情のこもらない私の声を聞いた彼は気を悪くしたらしい。


私を見て苦笑いを浮かべた。



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