世界を濡らす、やまない雨
傘がいるのは、雨の日ばかりではない。
ぎらぎらと太陽が照りつける晴れた日にも、身を守るための傘が必要みたいだ。
太陽との睨みあいに負けて視線を落とす。
そのとき、背後から何かが軽快に坂道を滑りおりてくる音がした。
振り返ると、坂の上から一台の自転車が坂を下ってきていた。
それに乗る男子は、私の通う高校の制服を着ている。
私は坂を下ってくる自転車を眩しそうに見つめたあと、邪魔にならないように道の端に避けた。
徐々に近づいてくる自転車は、私のすぐ後ろで耳に響くブレーキの音を立ててスピードを緩める。
「バイバイ、道木さん」
誰かが私に声を掛けた。