長い夜の甘い罠【完】
少し躊躇いはあったものの、隼人の手を軽く握り締めると手を引かれ後頭部を抑えられ唇が重なると、そっと離れた。
「…ん……もう隼人ったら」
「…じゃあな」
「ええ、今日は私が貴方を見送るわ」
「…分かった」
「隼人、健康と怪我には気を付けて元気でいてね」
「最後みたいな言い方はやめろ」
「…そうね。さようなら。気を付けて帰ってね」
「ああ」
隼人は正面に向き直り、ハンドルを握ると車を発進させた。
私は遠ざかる車に手を振る。
「……さよう…なら…」
一気に視界が滲んで行く。
私から決めた別れなのに…心が辛くて凄く悲しい…。