長い夜の甘い罠【完】


隼人は何かを察したのか、車内では沈黙が続く中、流れる景色をじっと眺めた。

この車に乗るのはこれが最後。

私、結局最後まで嫌な女で終わってしまうのね。隼人はモテるから、一ヶ月もすれば私の事を忘れてしまうんだろうな。

また次に新しい人を見付けて、幸せになって欲しいって思うのと誰にも渡したくないと思うのとで凄く複雑…。

いつもと違いあっという間に時間が過ぎ、気が付いた時には私の部屋の前に車が停まった。


「有難う、隼人」

「いや。また来週迎えに来る」

「もう会わないって言ったでしょ」

「なら居留守でも何でも使えば良い」

「…分かった」


車から降りると運転席側へと歩み、隼人の横に立ち下ろされたウィンドウから隼人は手を伸ばして来た。


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