長い夜の甘い罠【完】


「…っ……お母さん…」


…そう言えば、よく家族で海へ来た事あったっけ。今の記憶はその時のもの。

手が小さく震え始める。私の家族。今はいないけれど、確かに存在していた家族。

自然と涙が溢れ出る。

またあの時に戻れたら良いのに。家族四人でまた海で遊べたら良いのに…。


「…美咲」

「…っ…ぅ……やだ、触らないで!嫌っ!離して!」


男は私の身体を強引に引き寄せ、抱き締める。

抵抗しもがく私の力を無理矢理捩じ伏せ、その胸に強く抱き締めたまま離してくれない。


< 28 / 231 >

この作品をシェア

pagetop