隣のぼーいふれんどサマ。


「帰るよ。」と簡単に言ったものの、雅の家はあたしの家と正反対の方向にある。


でも雅は何も言わず、あたしを家まで送ってくれた。


こういうときだけは優しいんだから・・・。


なんだかんだ言い合いながらだと、あっという間に家についた。


「・・・雅。」


「何?和紗。」


言おうかどうか悩んだが、一応言っておく。


「・・・とりあえず、ありがとう。でも、これから抱きつくのとかはダメね。」


「どうして?」


雅の犬みたいに潤んだ瞳が、あたしに向けられる。


「ど、どうしてって、駄目に決まって」


傘の柄を握っていたあたしの左手を引き、バランスが崩れた体を雅が抱きしめた。


「み、雅っ!!」


「ダメじゃないでしょ?だって僕、和紗のことが大好きだよ。好きな人をぎゅってしたいって、普通思うでしょ?」


・・・


そうだね。


あたしだって思うよ。


「・・・うん。でもね、雅。あたしは雅のこと━━━━んっ!!」


「あたしは雅のこと好きになれない」


そう言い終わる前に、あたしの口が塞がれた。


もちろん、雅の唇で。




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