初恋シグナル~再会は恋の合図~

一紀先輩の温かい言葉に、辻村くんは表情をやわらげた。



────後半が始まる。


ぞろぞろと皆がピッチに戻っていく中、辻村くんに近づいていったのは、松田先輩だった。



「……俺は、まだ認めないからな」


「……分かってます」



そう簡単に認められるとは思っていない、とでも言いたげに、辻村くんは頷く。



「けど、前半は確かに俺たちが悪かった。お前のことは気に食わないが、ちゃんと責任は果たす」


「あはは、本当ですよ先輩。ピッチに立てない選手だっているんですよ?」



辻村くんと松田先輩の重々しい会話に呑気に割り込んで言ったのは、瞬くん。


軽口のように聞こえて、その言葉は本気だ。


前半の先輩たちのプレーにひどく腹を立てていたことが充分伝わる、強い視線で松田先輩を見ていた。


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