守護者たちの饗宴 ―エメラルド・ナイト―
 視線の先でベリルの視線と鉢合わせをしてしまい、ダグラスは慌てて資料に意識を戻す。

そんな彼にベリルは人の悪い笑みを浮かべてこう切り出した。


「そういう事だ。うまくやれ」


 何が『そういう事』なのだろう。

困惑するダグラスにベリルは補足する。


「護衛といっても大っぴらなものではなく、あくまでもさりげないバックアップだ。

私よりもお前のほうが適任だろう」


 資料を読んでいたのであればその意図は解るだろう?

 とでも言いたげなベリルにダグラスは内心冷や汗をかいた。

あの口調はダグラスの思考が目の前の依頼から脱線していたことに絶対に気づいている。

それを解った上で言っているのだ。

でなければあんな説明をわざわざするものか。


「出発は一週間後だ」


 焦っている事を必死に隠そうとするダグラスに笑いを堪えつつ、ベリルはキッチンへと向かう。


「さて、夕飯は何にするかね」


 心なしか愉しげにベリルはそう独りごちた。
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