恋をしたのは澤村さん

こんな事を言われたかったわけじゃない、こんな風に踏みにじられたかったわけじゃない。
叩いた手がじんじんと痛みまた涙が頬を伝っていく。
後から後から止まることを知らないそれは、知ってしまった事実を知られてしまった事実を受け止めたくないようにただ私の頬を伝っていく。

「……最低、か」

叩かれた頬を押さえて自嘲気味に笑う島津木くんの顔は見たこともないひどく大人びた顔だった。

「………好きな人が叶わない恋して雨の中傘も指さず帰ってるのを見て心配しないような人間じゃないよ?俺」

「……ますます最低…」

見られていたんだ。
昨日の事。

じっと睨み付ける様に見れば彼の左手が私の頬を拭った。
なにも言わずただ涙だけを拭っていく。
ほっといてよ、震えた声で拒絶をすると島津木くんは笑った。
痛そうに辛そうに。
まるで、自分が傷ついてるみたいに。

「放っておけるわけないよ。ねぇ、田中さん。
俺じゃダメなの?」

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