恋をしたのは澤村さん


「島津木くんどこー?」

「こっちこっち!!えっと、アザラシの看板の下の方!」

ざわざわとさわがしい喧騒と人混みのなかあたしの身長では見事回りは埋め尽くされて島津木くんを探すには至難の技だった。
なんとか見つけ出したアザラシの看板。
人混みを無理矢理分け入るようにその下に近づくと島津木くんは確かにそこに立っていた。

「お疲れ、大丈夫?」

「ごめんね。遅れちゃって…。
スカートなんかじゃなくてズボンで来れば良かったね」

この人混みじゃスカートじゃ歩きづらい。
申し訳なくて下を向いていたら島津木くんはボサボサになったあたしの髪の毛を緩く指で鋤いてくれた。

「いいよ。
似合ってるし、何より可愛いから」

島津木くんのそのストレートな物の言い方は相変わらずなれなくて顔が熱くなる。
簡単に可愛いなんて言わないでほしいな。
心臓がいくらあっても足りない。

「好きだよ、田中さん」

いつだって柔らかいその笑顔と優しい声であたしを呼んでくれる。
こんな幸せがあっていいのかな。

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