夢の欠片
「おーっす羚弥。お前遅すぎんだよ。どんだけ遅刻すんだって感じだわ。それよりさあ、殺人事件あったの知ってる?」
狙い通り休み時間に教室に入った俺に、友達の本田学(まなぶ)が声をかけてきた。
「え? いや、俺そんなにテレビ観ねえから分かんねえわ」
それにしても腰が痛え。結構強く打ってたんだな。
背を伸ばして腰を摩る。
「そっか。子どもが親を殺すっていう凄い事件だったから印象が強くてさ」
「ふーん。確かにそれは凄いな。よほど恨みがあったか、気が狂ったかどっちかだろうな」
「そうだろうな」
そんな激しい感情なんか、今の暮らしからは想像もできないな。
「なあ、羚弥。その親を殺した事件さ、隣の県で起きたらしいんだよね。もし犯人がここに来たらどうする?」
“隣の県”あたりから怖がらせるような口調になって煽ってきたので、煽り返してやることにした。
「もし来たとしたらお前を盾にして逃げるかもな。ハハハ」
「てめぇ……いいよいいよ、俺は勇敢な人として名声が上がるだろうからな。そしてお前はだっさいやつとして世間一般に知られていくのさ!」
俺は鼻で笑った。
「俺の友達が襲われてますーって警察に連絡した時点でヒーロー同然だから」
「汚ねえぞ! 俺だってヒー」
キーン コーン カーン コーン
学が何か言いかけた時にちょうどチャイムが鳴り、そそくさと席に着いた。その直後、扉が開いて社会科の担当教師が入室してきた。それを見計らって、号令係が起立、気をつけ、礼の一連の動作を指示し、授業が始まった。
次々と教科書やノートを開く者が現れる中、俺は間も無く強烈な睡魔で夢の中へと旅立っていった。
狙い通り休み時間に教室に入った俺に、友達の本田学(まなぶ)が声をかけてきた。
「え? いや、俺そんなにテレビ観ねえから分かんねえわ」
それにしても腰が痛え。結構強く打ってたんだな。
背を伸ばして腰を摩る。
「そっか。子どもが親を殺すっていう凄い事件だったから印象が強くてさ」
「ふーん。確かにそれは凄いな。よほど恨みがあったか、気が狂ったかどっちかだろうな」
「そうだろうな」
そんな激しい感情なんか、今の暮らしからは想像もできないな。
「なあ、羚弥。その親を殺した事件さ、隣の県で起きたらしいんだよね。もし犯人がここに来たらどうする?」
“隣の県”あたりから怖がらせるような口調になって煽ってきたので、煽り返してやることにした。
「もし来たとしたらお前を盾にして逃げるかもな。ハハハ」
「てめぇ……いいよいいよ、俺は勇敢な人として名声が上がるだろうからな。そしてお前はだっさいやつとして世間一般に知られていくのさ!」
俺は鼻で笑った。
「俺の友達が襲われてますーって警察に連絡した時点でヒーロー同然だから」
「汚ねえぞ! 俺だってヒー」
キーン コーン カーン コーン
学が何か言いかけた時にちょうどチャイムが鳴り、そそくさと席に着いた。その直後、扉が開いて社会科の担当教師が入室してきた。それを見計らって、号令係が起立、気をつけ、礼の一連の動作を指示し、授業が始まった。
次々と教科書やノートを開く者が現れる中、俺は間も無く強烈な睡魔で夢の中へと旅立っていった。