夢の欠片
「いつまで寝てんだよ!」
その声と同時に、後頭部に衝撃を感じた羚弥は、少し苛立ちながらも身体を起こした。そして頭を抑えながら、隣で口元に笑みを浮かべている学に怒声を放った。
「学、叩いたのお前か! 起こし方が乱暴すぎるだろうが!」
その声に何の怯みも見せない学は、ざまあみろと言った後、席に座っている羚弥と同じ目線になるまで中腰の姿勢になり、当たり前のことを口にした。
「昼休みになるまでぐっすり寝ているお前が悪い」
その言葉を聞いて、羚弥は黒板の上の時計を見た。針は学の言った通り、昼休みの時間帯であることを示していた。
「だからと言ってその起こし方はないだろう」
ジンジン痛む頭を抑えながら、羚弥は口を尖らせてそう言った。それに対し、学は羚弥の嫌いな正論をぶつけてきた。
「そうか? 俺はお前にしか迷惑かけてないけど、お前は先生がお前を起こそうとする時間分の授業を妨害してんだぞ。ま、先生も諦めて授業を再開したとはいえ、一時的に授業を潰して皆に迷惑をかけたのは変わらない。悪いのはどっちだ?」
「くっ……」
正論ラッシュが続き、羚弥を言葉を詰まらせた。
「そもそも失礼にもほどがあるだろう。礼もしてないし。何のために学校来てんだよ。腕を枕にして寝るくらいなら、授業ちゃんと聴いてその腕で板書しろよな。本当あり得ねえわ。第一……」
「分かった分かった! 俺が悪かったですよ!」
まだまだ続きそうな正論ラッシュを必死に止め、悔しがりながらも羚弥は思ってもいないことを口にした。
「分かればよろしい。ま、俺も途切れ途切れに寝てたしな」
「お前もかよ!」
さっき正論ラッシュを言ってたくせに何なんだよと思いながら、羚弥は鋭いを突っ込みを入れた。
「まあまあ。そんなにきれんなって。それより昼休み終わっちまうぞ。飯食おうぜ」
「ああ、そうだな」
しぶしぶながらも言い争いは学の勝利で終わり、羚弥と学は昼食を取り出した。そして、学が羚弥の前の席に座り、机を後ろ向きにして繋げると、談笑を交えながら食べ始めた。
「なあ、今日遊ばね?」
しばらく会話が続いた後に、思い出すかのように学にそう言われた羚弥は、一瞬いいね、と言いそうになったが、由梨のことを思い出して断ることにした。
「ごめん。無理だ」
「ええー、何で?」
「今日はいろいろあってね。忙しいんだ」
「マジかよ。暇だなー」
「ゲームでもしてろ」
「飽きたもん」
無駄にしつこい学に少しイラっとしながらも、この会話をすぐ終わらせたいと思い、羚弥は明らかに急いでると思われない程度の早さで昼食を食べると、席を立った。
「んじゃ、トイレ行ってくるわ」
「おう」
用を足すつもりでトイレに行くと言ったわけではなかったため、羚弥はゆっくりと廊下を歩いていた。
ブーーーブーーー
「ん?」
そんな時、学校で使うことはタブーとされている携帯のバイブが振動した。
「電源切るの忘れてた……」
苦笑しながらもちょうどいいな、と思った羚弥は、少し歩調を早めてトイレに向かった。
トイレに着き、羚弥は個室に入っておもむろに携帯を取り出した。そして、メールの確認をした。
見ると、真弓から『由梨について』という件名のメールが届いていた。羚弥はそれを開き、黙読した。
『さっきさ、由梨ちゃんの生活用具を揃えようと思って買い物に誘ったんだけど、何かに怯えてるみたいでついてきてくれないんだよね。だから、お金は後で渡すから帰りに歯ブラシと可愛いお箸買ってきて。頼んだよ』
羚弥は『了解』と返信すると、個室を出て、教室に戻っていった。
その声と同時に、後頭部に衝撃を感じた羚弥は、少し苛立ちながらも身体を起こした。そして頭を抑えながら、隣で口元に笑みを浮かべている学に怒声を放った。
「学、叩いたのお前か! 起こし方が乱暴すぎるだろうが!」
その声に何の怯みも見せない学は、ざまあみろと言った後、席に座っている羚弥と同じ目線になるまで中腰の姿勢になり、当たり前のことを口にした。
「昼休みになるまでぐっすり寝ているお前が悪い」
その言葉を聞いて、羚弥は黒板の上の時計を見た。針は学の言った通り、昼休みの時間帯であることを示していた。
「だからと言ってその起こし方はないだろう」
ジンジン痛む頭を抑えながら、羚弥は口を尖らせてそう言った。それに対し、学は羚弥の嫌いな正論をぶつけてきた。
「そうか? 俺はお前にしか迷惑かけてないけど、お前は先生がお前を起こそうとする時間分の授業を妨害してんだぞ。ま、先生も諦めて授業を再開したとはいえ、一時的に授業を潰して皆に迷惑をかけたのは変わらない。悪いのはどっちだ?」
「くっ……」
正論ラッシュが続き、羚弥を言葉を詰まらせた。
「そもそも失礼にもほどがあるだろう。礼もしてないし。何のために学校来てんだよ。腕を枕にして寝るくらいなら、授業ちゃんと聴いてその腕で板書しろよな。本当あり得ねえわ。第一……」
「分かった分かった! 俺が悪かったですよ!」
まだまだ続きそうな正論ラッシュを必死に止め、悔しがりながらも羚弥は思ってもいないことを口にした。
「分かればよろしい。ま、俺も途切れ途切れに寝てたしな」
「お前もかよ!」
さっき正論ラッシュを言ってたくせに何なんだよと思いながら、羚弥は鋭いを突っ込みを入れた。
「まあまあ。そんなにきれんなって。それより昼休み終わっちまうぞ。飯食おうぜ」
「ああ、そうだな」
しぶしぶながらも言い争いは学の勝利で終わり、羚弥と学は昼食を取り出した。そして、学が羚弥の前の席に座り、机を後ろ向きにして繋げると、談笑を交えながら食べ始めた。
「なあ、今日遊ばね?」
しばらく会話が続いた後に、思い出すかのように学にそう言われた羚弥は、一瞬いいね、と言いそうになったが、由梨のことを思い出して断ることにした。
「ごめん。無理だ」
「ええー、何で?」
「今日はいろいろあってね。忙しいんだ」
「マジかよ。暇だなー」
「ゲームでもしてろ」
「飽きたもん」
無駄にしつこい学に少しイラっとしながらも、この会話をすぐ終わらせたいと思い、羚弥は明らかに急いでると思われない程度の早さで昼食を食べると、席を立った。
「んじゃ、トイレ行ってくるわ」
「おう」
用を足すつもりでトイレに行くと言ったわけではなかったため、羚弥はゆっくりと廊下を歩いていた。
ブーーーブーーー
「ん?」
そんな時、学校で使うことはタブーとされている携帯のバイブが振動した。
「電源切るの忘れてた……」
苦笑しながらもちょうどいいな、と思った羚弥は、少し歩調を早めてトイレに向かった。
トイレに着き、羚弥は個室に入っておもむろに携帯を取り出した。そして、メールの確認をした。
見ると、真弓から『由梨について』という件名のメールが届いていた。羚弥はそれを開き、黙読した。
『さっきさ、由梨ちゃんの生活用具を揃えようと思って買い物に誘ったんだけど、何かに怯えてるみたいでついてきてくれないんだよね。だから、お金は後で渡すから帰りに歯ブラシと可愛いお箸買ってきて。頼んだよ』
羚弥は『了解』と返信すると、個室を出て、教室に戻っていった。