夢の欠片
お前を殺せば全てが終わる。俺の憎しみも、お前の狂気も。


お前は俺を殺そうとしている。今この瞬間確かめようとしなくても、感じるんだ。分かんねえけど、胸のざわつきってやつかな。


本当はこんな憎しみなんか忘れてしまいたかった。ずっと思い出したくなかった。そう願って頭に石を打ち続けていたのに、せっかくほとんどの記憶を失ってまで忘れていたのに、こうして思い出してしまった。


もしお前が親を殺さなかったら、俺はこうしてここまで憎しみを募らせることはなかったのかもしれない。多分、心の奥底にしまって、嫌な思い出として片付けていたんだと思う。


でも、それは甘かったんだ。何でも自分の思い通りにならないと気が済まないお前に、きっと家事とか介助とか、そんなものは合わなかったんだろう。


いくつになっても性格は変わらず、大人になろうとしない。その自分勝手さは、俺がけりをつけてやらないといけないんだ。


本来ならあの出て行く瞬間に殺れば良かったものを、俺はここまで引き伸ばしてしまったんだ。俺のせいで母さんも父さんも死んでしまった。本当にごめん。


「……ああ、そうだ。『俺』って言っちゃダメなんだっけ」


俺は目の前の人物を睨みつけた。


「そうだよ。連夜。分かってるじゃねえか。ただ、一つだけ分かってねえことがあるな」


「何だよ」


「俺に逆らったらどうなるかってことだ!」


「うあああああああああ!!!」


俺は包丁を両手に握りしめて走り出した。でもなぜだ、何でお前は笑っているんだ。


「俺がどうやってコンビニから飯を頂戴したと思う」


妙な胸騒ぎがする。


「お前は俺に勝つことなんてできないのさ。これだよ」


ポケットから出されたそれは、カチっと音を立てた後、凄まじい轟音を放った。
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