金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「俺はあの頃……お前を、生徒以上の存在として見ていた」
床におでこをくっつけたままで、岡澤が語り出す。
「最初は、ほんの出来心だった……でも、お前が抵抗しなかったから、いい気になって……止められなかったんだ……」
「……もう、いいです。今さら弁解されても、さっき言ってたことの方が本音に聞こえましたから」
私はそう吐き捨て、床にへばりつくみっともない姿の岡澤から目をそらした。
何を言われても、もう岡澤を許す気なんてない。
だけど全てをぶちまけたことで、すっきりはしていた。
溜まりに溜まって心を淀ませていた憎しみが、恨みが、霧のように小さな小さな粒になって……
少しずつ、晴れていくような、予感がする。