金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「岡澤先生……ひとつ、確認があります」
いつまでも頭を上げようとしない岡澤に、今度は恩田先生が声を掛ける。
「被害者は……三枝さんだけですか?」
私はその質問にはっとした。
今までそんな可能性を考えたことはなかったけど……
岡澤なら、私以外の生徒のことも、傷つけていてもおかしくない。
もしそうなら、もっと早くこうしていればよかった。
私がずっと泣き寝入りしていたせいで、もしかしたら新たな被害者が……
「それは、ありません……三枝は俺にとって特別だった。無条件に俺を慕ってくれて、信頼を置いてくれてて……それを俺は特別な好意と勘違いしていたんだ、馬鹿なことに」
「……誓えますか、他に被害者はいないと」
「はい……」
そう言った岡澤の目から、ぽたぽたと涙の滴が落ちて応接室のじゅうたんに染みを作った。
……どうやら、芝居ではなさそうだ。