金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「無防備……」
「高校生の男子なんて、頭の中はいやらしいことで一杯なんですよ?しかも、こんなひとけのない場所……もう少し危機感を持ってください」
「……はい」
私はしゅんとして、うつむく。
先生なら優しい言葉をかけてくれるんじゃないかって、少し期待してたから……こんな風に怒られるのは余計にショックだった。
「……それとも。土居くんならいいと、思ったんですか?」
「え……?」
「もしそうなら、僕はとんだ邪魔者でしたね……謝ります」
ぺこっと頭を下げる先生を見て、私は慌てて首を横に振った。
「土居くんのことは何とも思ってません!それに、強い力で腕を掴まれたら怖くなって……だから先生が来てくれて、本当に助かったんです」
「……それなら良かった」
静かで優しい、いつもの声で先生が言った。
「でも、本当に気を付けて。僕はもうきみが傷ついたところを見たくないんです」