金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「……丁度よかった、三枝のこと探してた」
そう言って私の手を引く土居くん。
先生方に見つかったら問題になるからと庭の植え込みの陰に二人で隠れ、芝生の上に腰を下ろした。
恩田先生が私を追いかけてくる様子がないことに安心しながら、同時に寂しくも感じる。
勝手だな、私……
ぐちゃぐちゃな顔を膝に押し付けると、土居くんが口を開いた。
「……また、アイツになんかされたのか?」
アイツ……それが誰かなんて、聞かなくても解る。
だけど答えるのが面倒臭い。もうやだ。さっきのことは早く忘れたい。
泣いてばかりで黙ったままの私に呆れたのか、土居くんがため息をつくのが聞こえた。
「……もしもアイツがこれ以上三枝を傷つけるんなら、俺にだって考えがある。三枝、これを見てくれ」
考えって何……?
少しだけ顔を上げて隣の土居くんを見ると、慣れない手つきで大きなカメラを操作していた。
そして私の前にずいっとそのカメラを差し出し、液晶画面を見せてきた。