金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

「これ、杉浦が撮ったらしいんだけど……三枝の部屋にアイツが入るところだろ?」



さっと血の気が引くのが解った。

それは昨日の先生と私が……普通じゃない視線を絡ませながら、部屋の前で立っている写真だった。



「なんで、これ……」


「杉浦、昨日からずっと三枝に謝るタイミング探して部屋の近くをうろうろしてたらしいんだ。
で、そしたらアイツが現れて、ただごとじゃない雰囲気醸し出しながら部屋に入ってったって」


「……ただごとじゃない雰囲気だなんて。そんなの、杉浦くんの勘違いだよ。先生は私の具合が悪いんじゃないかって心配して様子見に来ただけで」


「――――嘘だ」



土居くんが、鋭い口調で言った。

そして素早く画面の横のボタンを押し、次の写真を私に見せてきた。


……私の胸が、どくんと嫌な音を立てた。



「杉浦も趣味が悪いと思うけど、これならアイツを追い詰めるのに充分な証拠になるだろ。……三枝、俺はもうお前が傷つくとこは見たくないんだ」



カメラがとらえていたのは、ほんの一瞬……

扉が閉まる寸前に私を抱き寄せる先生の後姿。


“アイツを追い詰める証拠”ってことは、まさか……


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