金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「これを……誰かに見せるつもりなの?」
「……本当は、そんなことしたくない」
「やめて……」
「だって、そうでもしなきゃ三枝が……!」
土居くんが、私の肩を掴んで真正面から見つめてきた。
夜なのに、彼の澄んだ瞳は輝きながら私を映す。
今の私には眩しすぎる。
そんな綺麗な目で私を見ないで……
「私は、平気だから……」
「平気なわけないだろ!あいつのそばに居たらまた……こんな風に、泣くだろ……っ」
土居くんの強い口調に、私の目からまた新たな涙が湧いてきた。
確かに先生と一緒に居たら、きっとこのままなんだろう。
いつになったら私だけを見てくれるのか解らない、出口の見えない迷路……
……どうしよう、今、私迷子だ。
その迷路の中で土居くんが降ろしてくれた梯子に、掴まりたくなってる――――。