金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「――――何の用?」
土居くんの刺々しい物言いですぐに解った。
私の後ろで、私の思うお花の素敵さを代弁してくれたのが、先生だってことに。
「用……というより注意でしょうか。今は班行動の時間です。二人だけで別行動を取っている生徒を見逃すことはできません」
「……よく言うよ。こそこそ女子生徒の部屋に行くような教師が」
「――――土居くん!!」
私が大声を出すと、土居くんは言い過ぎたと解ってくれたのか気まずそうに瞳を伏せた。
まだなにか言いたそうだけど、私が自分で言うから……我慢していてね。
私は先生の方に身体を向け、一度ごくりと息をのみ込んでから……その顔を見上げた。
あの夜、私を傷つけたことを知らない優しい瞳……今日はそこにちゃんと私を映してくれているようだけど、信じきることができない。
「ごめんなさい、今から班の皆と合流します。それと、先生……」
……言わなくちゃ。
先生のためにも私のためにも、きっとこうすることが一番いい……
そう、思っているはずなのに。
「もう、私に……構わないで、下さい」
その言葉をぶつけたときには、先生の目を見ることができなかった。