金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「わぁ、綺麗……」
大きな透明のビニールハウスの中にある植物園はランの仲間をメインに栽培していて、その花が温室中にいっぱい咲き乱れていた。
「不思議な咲き方をするんだな……」
土に根を下ろさずに、他の木にくっついて花を咲かせるラン。
普段は見られない光景に、私は興味津々だ。
もしかしたら沖縄に来てから一番興奮しているかもしれない。
やっぱり、花はいいな。
「三枝、後ろが詰まってる」
「……あ、ごめんなさい!」
狭い通路で立ち止まってしまっていた私に、土居くんがそう声を掛ける。
彼は慌てて先へ進む私の姿を見てぷっと吹き出してから、こんなことを聞いてきた。
「花、そんなに好きなんだ?」
「うん、好き」
「ふうん。どこが?」
「どこ……って」
四季を感じさせてくれるところ、個性的な色や形や香り……見ているだけで顔が綻ぶような癒し効果もあるし、中には食べられる花だって……
「――いつかは散ってしまう、そのはかなさがいいのではないですか?」
「あ……そう!綺麗なんだけど、その美しさは永遠じゃないっていう、その物悲しい感じが……」
私はそこまで言って、土居くんの視線が不自然な場所を見ていることに気が付いた。
話している私じゃなくて、そのまた後ろの何かを睨んでいるような……