金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「三枝さん、それは一体どういう……」
「――――行こう、土居くん」
私は先生の言葉を遮って、早足でその場から歩き出した。
自分の言いたいことだけ言って、先生に何も言わせないのはずるいのかもしれない。
でも、向き合ってちゃんと話し合うなんて無理だよ。
もしも面と向かって、私よりも小夜子さんを選ぶときっぱり言われてしまったら、私はもう立ち直れない……
「……三枝」
「なに」
「昨日言ったこと……撤回してもいい?」
ぴた、と足を止めて土居くんの方を振り返った。
真剣な表情の彼が一歩一歩、私に近づいてくる。
なんでここには誰もいないんだろう……私たちを見ているのは色とりどりのカトレアだけだ。
土居くんが言おうとしてることがなんとなく解るから、逃げたい。
でも、その強い眼差しからは逃れることなんてできなくて……
「――付き合おう、俺たち。俺があいつを忘れさせる。絶対に泣かせたりしない」
「でも……」
「今は俺を好きじゃなくてもいい。ゆっくり俺を知ってくれれば、いいから…」