金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「本当は恩田先生にも聞きたいところだけど、それは無理だから千秋ちゃんに代表してもらうね。
あのね……二人の“秋”の字を、うちの子にも貰っていい?」
「……秋の字を?」
「そう。11月生まれだし、二人みたいに、心の優しい子になって欲しいって願いを込めて。
それに私の字を足して……秋菜(あきな)っていうのはどうかなって」
「秋菜!可愛い!」
手を叩いてその名を褒める有紗。
私はなんだかくすぐったいような気がして、菜月ちゃんに尋ねる。
「菜月ちゃんと木村先生の赤ちゃんなのに、いいの……?関係ない私たちの名前を由来にして」
「関係なくないよ。パパとママが憧れる、素敵な二人から名前をもらったんだよって、この子に将来教えてあげたいの」
「菜月ちゃん……」
素敵な二人、なんかじゃないよ……
今はお互いが何をしているかも知らないんだよ。
もうすぐ再会できるはずなのに、それがいつなのかも、まだ知らないんだよ……
「千秋ちゃん……?」
心配そうな菜月ちゃんの表情で気づいた。
自分が、いつの間にか泣いてたってことに。