金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
髪と身体を急いで洗って湯船につかると、半分だけ閉めたお風呂のふたの上で携帯を操作する。
メール、新規作成、宛先……電話帳から選ぶ。
さしすせ、そ……曽川……あった。
「曽川……響(ひびき)って言うんだ」
……名前まで、格好良すぎ。
宛先まで入力して、私は大きく息を吸い込む。
恩田に言われたことを鵜呑みにするわけじゃないけど、このまま誰のことも信じなかったら私は一生恋愛できない気がする。
もしも曽川先輩が軽い気持ちだとしても、信じてみれば何かが変わるって……本当のカップルになれるって……思いたい。
私は意を決して本文の入力を始めた。
緊張して何度も打ち間違えながら、私は自分にできる精一杯の返事を打つ。
『今日はありがとうございました。先輩と一緒に居ると、憂鬱なことも忘れられてとても楽しかったです!
それで告白のお返事なのですが……私で良かったら、先輩の彼女になりたいです』