金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

家に着くと急いで中に入り、鍵をかけて大きく息を吐き出した。


リビングの方から出てきたお母さんが、私の姿を見て驚く。



「どうしたのよ千秋、その格好……それに、その足……」



私はそれには答えず、汚い足で廊下に上がりながら言った。



「お母さん、今から担任が訪ねてくるかもしれないけど、追い返して」


「え……?どうして突然先生が……?」


「いいから。絶対うちの中になんて上げないでよね」



吐き捨てるように言って、私は階段を上る。



「千秋!ちゃんと説明して!」



……ごめん、お母さん。

今日のことは優しいお母さんには絶対に言えないの。


朝、いつもと違う私の服装を見て『デート?』と嬉しそうに聞いてきたお母さんには……言えないの。


自分の部屋に入り、扉を閉めるなり私は服を脱ぎ出す。


なんで、あの時断れなかったんだろう……

こんな服……着たくないって。


いいように利用されて、捨てられて……


本当に私、馬鹿だ……


大馬鹿だ……


< 73 / 410 >

この作品をシェア

pagetop