金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
家に着くと急いで中に入り、鍵をかけて大きく息を吐き出した。
リビングの方から出てきたお母さんが、私の姿を見て驚く。
「どうしたのよ千秋、その格好……それに、その足……」
私はそれには答えず、汚い足で廊下に上がりながら言った。
「お母さん、今から担任が訪ねてくるかもしれないけど、追い返して」
「え……?どうして突然先生が……?」
「いいから。絶対うちの中になんて上げないでよね」
吐き捨てるように言って、私は階段を上る。
「千秋!ちゃんと説明して!」
……ごめん、お母さん。
今日のことは優しいお母さんには絶対に言えないの。
朝、いつもと違う私の服装を見て『デート?』と嬉しそうに聞いてきたお母さんには……言えないの。
自分の部屋に入り、扉を閉めるなり私は服を脱ぎ出す。
なんで、あの時断れなかったんだろう……
こんな服……着たくないって。
いいように利用されて、捨てられて……
本当に私、馬鹿だ……
大馬鹿だ……