濡れた唇【TABOO】
濡れた唇

 黒板にぶつかるチョークの音

 伸びきった髪にシワシワの白衣の後ろ姿

 頬杖をついてため息

 数学なんて、大嫌い

 全然、意味がわかんない。


 私は数字を見るより美しい文章を眺めてるほうが好きだ。


「はい、この問題解いて」

「わかりません」

「あのなぁ……」

 シルバーフレームの奥の切れ長な瞳が私を睨みつける。チョークのついた指で頭をかきむしる。

 すると、先生は教科書を閉じて教卓の上に置いた。


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