* another sky *

打ち合わせは滞りなく終わり、諏訪さんはもう一度現場へ立ち寄ってから、帰社するという。


「吉野はもう、直帰してええから。」


「え、でも…。」


「ええって、俺も現場から直帰するし。
早よ、帰れる時は帰れ。」


「…じゃあ、そうします。
諏訪さんありがとうございます。」


「…吉野が素直やと、俺、怖いわ。」


――――――――!


きゅっと睨み付けた私の頭を、諏訪さんはポンポンと、叩く。


「嘘やって。もう、怒りなさんな。
ほな、お疲れさん。」


「お疲れさまでした。」


「翼くんによろしく。」


―――――――!!


「も、諏訪さんっ!!」


諏訪さんは、ははっと笑って、振り返りもせずに歩いて行く。


もう………。


熱くなった頬を、手のひらで仰ぎながら駅へ向かって歩き出す。

切符を買って改札を入ろうとしたその時だった。


「玲ちゃん。」


という声に、呼び止められたんだ。



―――――――!!


佐藤君………。


すっかり気が緩んでいた私は、佐藤君を見た瞬間、たじろいでしまった。


「そんな顔、しなくても。」


会社で見かけなかったから、ホッとしてたのに。


「お疲れ様です。」


他人行儀な私の言葉に、佐藤君は吹き出した。


「玲ちゃん、顔に出し過ぎ。」


「……っ。」


一刻も早く、この場所から立ち去りたくて……。

酷い顔をしているのくらい、自分でもわかってた…。
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