Enchante ~あなたに逢えてよかった~
「そんなに急がなくても。ね?絢子サンだって色々考えたいでしょうから」
「あの・・・ちょっといいかしら?」
遠慮がちに絢子が大和に問いかけた。
その声に澤田は頭を上げて絢子を見つめた。
「はい?」
「考えるというか、ひとつお聞きしたい事があるんですけど」
「何です?改まって」
絢子は伺うように自分を見た大和の視線を一旦捕らえて
今度は澤田へとその目を向けた。
「まさか、とは思うけれど・・・
こちらの澤田さんはあのテニスの澤田選手のご親戚かなにか?」
「はい?」
「間違っていたらごめんなさいね。でも、お顔立ちとかが
何となく似てらっしゃるし名前も同じだし
澤田選手のプロフィールを詳しくは知らないんだけど・・・
もしかしてご兄弟とかそれに近いご関係かなと思って」
予想外の質問に男達は一瞬顔を見合わせて、盛大に笑った。
地方都市の方が知名度が低いと言った糸居のデータも
あながち間違ってはいないようだと思った澤田は苦笑い。
そして本人と疑うのならまだしも、兄弟とか親戚だと思ってしまう絢子の
ややズレた視点が妙にウケた大和は大笑い。
そんな二人の間で一人訳の分からない絢子はむくれて開き直った。
「何よ?!ナンなの?私、ヘンな事を言いました?」
「すみません~。そうでしたね。ちゃんと紹介しなかったボクが悪いです」
「いやいや申し訳ない」と言いながら
大和が眼鏡をずらしたのは目尻に滲んだ涙を拭う為のようで
そんなに笑う事ないじゃない、と絢子は憤慨して剥れた。
「彼はのフルネームは澤田駿。あのテニスの澤田選手、本人ですよ」