カゼヒキサン。
「なんで…?」

「お父さんは…この前……お母さんと喧嘩、して…。出てっちゃったよ…。」

顔が真っ赤で、目も真っ赤で、ボロボロ泣く瑞希。


「………いつ?」

「……5か月前…。」

俺ととっくに出会ってる。

でも俺は、明るい瑞希しか印象が無い。

そんなに苦しい事に、俺は気付けなかった。

苦しんでる瑞希に気付けなかった。



「……。」

何も言えなかった。


瑞希はゆっくり起き上がった。

「寝てろって…!」

そう言ったけど、まるで聞こえてないようにスルーされた。

そしてゆっくり…机の上の写真立てに手を伸ばす。

そこには…瑞希の母さんと、瑞希、そして…瑞希の父さんがいた。



「お父さん……!」

瑞希はまた、泣きだした。



もろくて、弱くて、悲しくて、苦しくて

そんな瑞希を、ただ見てるだけなんてできなくて

優しく包み込んであげたくて

心の支えになりたくて




俺は瑞希を、抱きしめた。
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