キスから魔法がとけるまで
「それで、パンプスを買いに来たわけね」
梨花が、自分好みのパンプスを手に取りながら呟く。
「まさか、あんな事になるなんてさ~。自分でもビックリ。脚が痺れてなかったら、容赦なく股間に蹴りでも入れてたのに」
私は、就活用の黒いのを見つけると、鏡の前で足をはめた。
「御愁傷様。で?大体、何でそんな事になったのよ?」
「さぁ、私にも良くわからないんだけど。でも、おじさんが変な事言ってたんだよね~……ミヤシロの女がどうとか」
「ミヤシロ?」
「もしかしたら、その人の恋人と間違われて連れて来られたのかも。始めっからなんか会話がおかしかったし。間違いじゃないのか?みたいな」
ふーんと、梨花は鏡の横にある椅子に腰を下ろすと、まじまじと視線を私に向けた。
「そのおじさんは、ミヤシロって人物に何かしら恨みを持っていたのかもね。だから、嫌がらせとして、恋人に手をだそうとした。そして、それを取り引きに利用したのが丸山東証……」
「そうなるのかもね……。人違いであんな目に合うなんて、本当迷惑もいいとこだし」
一番履き心地の良いパンプスを手にして、レジへと向かう私の後ろから、軽やかについてくると、梨花はそっと耳うちをした。
「助けてくれた彼には、見覚えないの?」
え!?
チャリンと音ともに小銭が床に落ちる。
思わず落としてしまった小銭を、慌てて拾うと、梨花はニヤニヤしながら、一緒になってしゃがみこんだ。
「あれれ、動揺してますな~」
「違うよ!?本当に知らない人だったし!あんな明るい髪に、カラコンするような人種、今までかつて、私の周りにいたと思う?」
「まぁ、確かに」と、急いでお会計を済ませた私の横を、一緒になって歩き出す梨花。
原田さんも茶髪だが、ごげ茶に近い。いたって普通に分類される類いだ。


