INそしてOUT
「つまらない話」
小さな本を乱暴に閉じ、男は僕に投げつけた。
そして言う
「これ、俺の書いた話だよ」
ゲッソリとした顔で笑うと迫力がある。
「作家志望でさ……一度新人賞までとったんだ。そこで勘違いして道を誤った」
静かに男は語りだす。
「才能があると思って、就職もせずにパソコンに向かったはいいけど、書くもの書くもの全てボツ。今じゃ風俗ライター」
姉が寂しそうな顔をする。
「ついでに人殺し」
ついでの方が重いけど。
僕は投げ出された本を大切にカバンに入れて、本題にとりかかる。