INそしてOUT
クルリと僕の方を向く。
手を振っている。
指輪が反射して輝いていた。
オニキスの指輪だろうか。
表情までは見えないが、きっといつもの柔らかく優しい顔をしているのだろう。
『ちゃんと食べてる?』
『風邪引いてない?』
『たまに帰って来なさい』
『お金は足りてるの?』
『身体こわしてない?』
『バイトは忙しいの?』
姉の声が頭の中でリフレイン。
半透明だった姉の姿が薄くなる。
足元から徐々に存在を消して行く。
本当のお別れだね。
さようなら姉さん。
最後に会えて嬉しかったよ。
大好きな姉さん。
涙がひとつ流れた後
姉の姿は消えていた。