INそしてOUT




 ……って話なんだけど」

最後の力を振り絞って、俺は話を終わらせた。

寒い。

冷凍庫に入ったような感覚が止まらない。いや……そろそろ感覚もなくなるだろう。

さっきまでの割れるような頭痛が遠ざかり、血の気が下へ下へと落ちてゆく。

俺はバスルームからありったけの力を出して、妻に新作の内容を話していた。

「つまんない」
妻は俺の話よりマスカラの付き具合が気になるようだ。
必死で話した内容も、ワイドショーよりランクが下かもしれない。

壁に背を寄せ
俺は洗面台で化粧する妻を目で追う。

「安っぽい話。それホラー?それとも感動物?」

言葉につまる。

「あなたの書く話っていっつも中途半端。怖がらせたいの?泣かせたいの?」

赤いルージュが揺れていた。

そして

「だから一発屋で終わるのよ」

鋭い言葉を発し笑う。

当たっているので

反論も出来ない。



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