竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
夕食の準備をしていると、窓の外をポツポツと雨粒が叩いているのに気付いて、慌ててリビングを突っ切りベランダの洗濯物を取り込む。
と、その時。ベランダから、ちょうど目の下に停まっていた車が目に入った。何気なく視線をむけると――
「うっ……そ……」
助手席から飛び出してきたのは母だった。
品のいいベージュのツーピースは、エリも気に入っていた。たとえ三階からでも見間違えるはずがない。
じゃあ、車に乗っているのがお母さんの恋の相手ってこと!?
いったいどんなヤツなの!?
慌てて持っていた洗濯物を部屋の中に放りこみ、雨に打たれるのも構わず手すりにしがみつき下を覗き込む。
母のあとを追うように、運転席から出てきたのはグレーのスーツの男だった。
上からしか覗けないが、衿と袖から覗く白シャツの配分(だいたい1.5センチ)も、上衿が首の後ろを吸いつくように覆い、肩のラインへと続いている様子も美しい。