竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
スーツを着なれているのがよくわかる。むしろ少し出来すぎなくらいの着こなしだ。
それに頭は小さく、肩幅は広い。足も驚くほど長かった。日本人離れしたスタイルの持ち主らしい。
あれが、お母さんの恋人……?
眺めているうちに、腹の底からふつふつと、嫌悪に似た気持ちがこみ上げてくる。
エリはスーツを着た男が大嫌いだった。
量販店で売られているような、安い吊りのスーツを着たサラリーマンならどうにかこうにか許せないこともないが、あの男のように、センスよくスーツを着こなした男は大嫌いだった。
(恋人には『基本的にスーツを着ない男』を意識的に選ぶほどだ)
男は母を呼び止め、何かを懸命に言い聞かせているように見える。
尋常な雰囲気ではないことはわかるが、それ以上のことは推測しか出来ない。
もしかして、いわゆるもつれてる状態?
ああ、雨さえ降ってなかったら会話が聞こえたかもしれないのに!