竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
年のころは二十代後半から三十代前半。漆黒の髪に、切れ長の瞳。意地悪そうなメタルフレームの眼鏡。
鼻はすっきりと高く、唇は少し頑固そうな雰囲気があったが、全体の彫りは深い。
美しいと言うよりも端正で、同時に他者を寄せ付けない、威圧的な雰囲気があった。
もしかして同僚?
あんな年下と付き合ってるの……?
「向こうからも、見えたかな……」
エリはサッシを閉めた後、カーテンで窓を覆う。
いや。この雨だし、ほんの一瞬だったし、きっと私の顔なんかわからなかっただろう。
それでもどこか不安は拭い去れず、カーテンを握りしめていると、ドアがガチャリと開く音がした。
「あ……」
振り返ると雨に濡れた母が、玄関を上がってくるところだった。
「あら、エリ帰ってたの?」
「お母さん……」
「ただいま。雨、降り出したからビックリしたわ」
母は何事もなかったかのように笑顔を浮かべ、自分の部屋へと入っていく。