竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
「――」
桜子の声に応えず、エリはうつむいたまま唇をかみしめテーブルの一点を凝視している。
今顔をあげれば、母の美しさに騙されそうな気がしたのだ。
「エリ!」
おっとりした母には珍しい、強い口調だった。
その強さに押されて仕方なく顔を上げると、凛とした母と眼差しがぶつかった。
感情を抑えてじっと自分を見つめる母。
白い肌はうっすらと上気して、輝いているように見える。
こんな時に何を考えているのかと笑われるかもしれないが――
エリは久しぶりに怒る母を見て「女として負けている」と感じていた。
美人は何をしても、美人だ。
泣いても怒っても、きれいなんだ。
こんなにきれいで女らしかったら、誰だって――
ふと、脳裏にマー君の言葉が浮かぶ。
『棒っきれ抱いてるみたい』
『ジョウチョがない』