竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち

エリはうんざりしながら、彼を見上げる。


身長はおそらく185センチ。上着、ベスト、ズボンを共布で作った、いわゆる三つ揃えのグレーのスーツを身にまとい、白いシャツと無地の紺色のネクタイをつけている。

もちろんポケットチーフまで完璧だ。まったく隙がない。こないだ見たあの兄弟と同じくらい、スーツを着なれている男だ。


っていうか、もしかしたらどこかの百貨店の紳士服バイヤーじゃないだろうか。

で、敵情視察にやってきた、とか……?


いやいや、もしかしたら逆にさざれ百貨店の人事なのかもしれない。

私が紳士服フロアの人間でないことがわかっていて、それでも応対を見るために、こうやってテストしてるのかも……。



「どっちがいいスーツ……」



エリは内心深々とため息をつきながらも、ハンガーにかかった二着のスーツを見比べた。


一つはパリッとしていて美しく、もう一方はなんだか猫背のように背中を丸めているように見える。

簡単だ。

パリッとしているほうがいいスーツに決まっている。


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