竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
「紡績されたままの糸を使うから、薄く、柔らかいんです。イギリス製の生地は、糸をさらによった双糸でもって、経(たて)糸と緯(よこ)糸を織りますから、生地は丈夫で、かっちりした印象になります」
エリの言葉に、男はメタルフレームの奥の切れ長の目をかすかに細める。
「どちらかを選べと言われたら、どうする」
「日常のスーツを選ばれるのであれば、イギリス製の生地で出来たものをお勧めします」
「正解だ。実際、イタリアのメーカーの既製品だって、好んでイギリス製の生地を使う」
男はやんわり笑って、イタリア製のスーツをハンガーにかけ、また違うところからハンガーを手に取った。
「では、この二着。どっちがいいスーツだ?」
はぁ!?
エリはあ然としたが、男は至極真面目な表情で自分を見下ろしている。
質問を取り下げるつもりはなさそうだった。
まるで試験でも受けさせられている気分だ。