竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち

それから花沙は、無言を貫いている長兄へと視線を向ける。



「雪兄、ごめん……」

「――いや」



苦虫をかみつぶしたような表情の長男、雪光(ゆきみつ)は、月翔の隣でしばらく考え込んでいたが、胸元のポケットから携帯を取りだしてメールを送る。



「桜子さんに伝えておいたほうがいいだろう」

「ああ、そうですね」



うなずく月翔。


彼女に、師匠の死を伝えたのは雪光だった。

そして彼の遺言も……。


月翔に桜子の気持ちはわからない。

しばらく考えさせてくれと言ったきり、なかなかエリィにも会わせてもらえない日々が続いた。

一番短気な三男が、マンションへと押しかけたはいいものの、エリィの姿はそこにはなく、結局こんな風に強行突破をしてしまったのだ――。



「エリィ、か……」



雪光は泣きながら眠っているエリを見下ろし、手を伸ばして、彼女の巻き毛を指に絡ませる。



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