ラララ吉祥寺

「男のお子さんですよ」

助産婦さんに抱かれた赤ちゃんは、まだちっちゃくて真っ赤で、可愛いと素直に言うにはリアルな生き物すぎて。

「芽衣さんは? 母体は大丈夫ですか?」

そう叫んだわたしに助産婦さんは言った。

「お母さんも元気ですよ。まだ後産があるんで、もう少しお待ちくださいね」

定期健診でのエコー写真では、足が邪魔をして男か女か見分けがつかなかったのだ。

だから仕方なく産着は男女どちらでも良いように、黄色や白を選んだ。

「男の子ですって」

「歩き始めたら大変そうだな」

「そしたら子守は木島さんにお願いしますよ」

「そんな無責任な」

「だって、男同士でしょ」

なんて、芽衣さん抜きで二人で盛り上がって。

少しだけ胸の奥がキリリと痛んだけれど。

気付かない振り、気付かない振り、とやり過ごした。
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