ラララ吉祥寺

わたしはこそこと台所に立ち、ミルクティーをTバッグで入れた。

グリルで焼いたトーストに、バターとマーマレードを塗ってお皿に乗せる。


さて、テーブルに座って木島さんと向き合ったものかどうか……。


この家に二人きりだということを妙に意識しまっていた。

いや……、でも、ここで立ったまま食べるのも不自然だよね……。


わたしがそんなことを考え固まっていると、

「文子さん?」

木島さんが新聞から顔をあげ、わたしの様子を伺うように声をかけてきた。

「は、はい?」

「こっちに座って食べないんですか?」

「あ、はい……」

そう言われるがままに席につき、トーストにかぶりついた。

わたしはバターをたっぷり塗ったジャム付きトーストが好きなのだ。

「少し早めに出て、井の頭公園を散歩しませんか?」

「え、あ、はい……」

「公園の向こうに洒落たカフェがあるんですよ」

ランチはそこでどうでしょう? と木島さんはあくまで自然体だった。
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