ラララ吉祥寺
父現る~第四夜

わたしは明日のことが心配で、トボトボと歩いていた。

花岡さんは上手く芽衣さんに気持ちを伝えることができるだろうか?

芽衣さんはそれを素直に受けとめることができるだろうか?

今、この時を逃したら離れていってしまうかもしれない二人の関係を思うと気が気でなかった。


もう今夜はお茶漬けでいいや、って気分だった。

木島さんには外で何か食べてきてもらおう、そんなことを考えながら、わたしはポストを覗いていた。

「山本さん、ですか?」

「はい?」

と振り返ると、そこには身なりの良い初老の紳士が立っていた。

レモンイエローのコットンシャツ、スェードのジャケットに襟元にはグリーンのスカーフ。

仕立てのいい折り目のついたツイードのスラックス、足元はこげ茶のデザートブーツ。

ひと目見ただけでも目を惹くお洒落な出で立ちだった。

顔付きは柔和で、ロマンスグレーの頭髪を後ろに流し、口元にはひげを蓄えている。


こんな紳士が我が家に何の用?
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