ラララ吉祥寺

「誤解しないでもらいたい。

僕達はいがみ合って別れたわけじゃない。ただ、生きる場所が違っただけなんです。

何処に居ても僕は宏子を想っていたし。

宏子も僕のことを想っていてくれた筈です。

今になって思えば、留学が決まってフランスに新天地を求めて出掛けていく僕を、彼女は後押ししてくれたのかもしれないと。

語学も絵にも馴染みのない彼女だったから、僕の足手まといになることを恐れて、ここに留まることを選んだんじゃないかと。

後になればなるほど、そう思えてきて。


もう少し早くここに戻って来ていれば……

そうすれば、宏子に会えたと思うと……、

それだけが残念です」

彼はそう言うと、手にしたハンカチで涙を拭った。
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